(12)一職を軽視する者は、
   どんな地位におかれても、不平をもつ
    秀吉の心がけ

光に向かって100の花束

 信長、秀吉、家康、三大武将で一番の人気者はだれか。

 おそらくカンシャク者の信長より、明朗闊達な秀吉に軍配をあげるだろう。
 なるほど家康は、全国を平定し、徳川300年の基礎を築いたが、なにかしら胸にいちもつある「タヌキオヤジ」の印象を受ける。
 そこへゆくと秀吉は、一介の水呑百姓からたたきあげ、天下を取ったが恬淡としている。
 負けても勝っても、有頂天にならず、メソメソ後悔もしない。
「太閤さまにまで出世されるには、違った心がけが、あったことと思いますが……」
 ある人がたずねた。
「ワシは、太閤になろうなどとは思ったことがない。草履取りのときは草履取りを一心に努めたら、足軽に取り立てられた。ありがたいことだと一生懸命仕えたら、侍になった。侍の仕事に夢中になっていると、いつしか侍大将になっていたのだ。ついに姫路一城を拝領するにいたった。ワシは、一職をうれば一職、一官を拝すれば一官、その職官に没頭して今日にいたったのだ。ほかに出世の秘訣は、なにもない」

 人生に目標を立てることは悪いことではない。
 けれども目標達成に急なるがあまり、今日1日の努力が宙に浮くことが、おうおうにしてある。
 権利だけ要求して義務をはたさぬ者の多い中、与えられた自己の場で、ただ死力を尽くす。“あの人には見どころがある”と、新しい重要ポストが与えられる。
 そこでまた脚下照顧して、ベストを尽くさねばならぬ。

 一職に忠実な者は、何事にも忠実だが、一職を軽視する者は、どんな地位におかれても不平をもつ。不満のある者は成功しない。

 与えられた使命を、忠実にはたすことが、成功への道である。

高森顕徹著 光に向かって 100の花束より)

 

 

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更新履歴

2015.01.08あわれむ心のないものは恵まれない~試された親切心(光に向かって)

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2013.08.24生活の乱れた学生の更生法~大学教授のたくみな指導(光に向かって)

2013.07.25下等の人間は舌を愛し、中等の人間は身を愛し、上等の人間は心を愛する(光に向かって)

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2012.08.06富んでも、昔の貧しさを忘れ、おごるなかれ 岩崎弥太郎とその母(光に向かって)

2012.05.30この娘を美しくないという者があれば、金子千両を出してやろう(光に向かって)

2012.05.30施した恩は思ってはならぬ。受けた恩は忘れてはならない(光に向かって)

2012.04.10己を変えれば、夫も妻も子供もみな変わる(光に向かって)

2012.04.10これへ、その下肥とやらをかけてまいれ、とバカ殿 偶像崇拝(光に向かって)

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