(54)賢者は何人からも学びとる
   敵将の献策をもちいた韓信

光に向かって

 かの背水の陣で有名な中国の名将・韓信は、2ヵ月の短期間で山西省の魏と代、河北省の趙、燕の諸国を制圧するという、驚嘆すべき戦果をあげている。

 背水の陣は、その戦歴の一つであるが、時には敗軍の将を優遇して、戦わずして勝利をおさめたこともある。

 10倍近い趙の大軍を破った韓信は、勢いに乗じて長駆し、燕を攻めようとしたとき、とらえた趙の軍師・広武君李左車の縛を解き、礼を正して計を問うた。

 かねて彼の見識を高く評価していたからである。
「敗軍の将、兵を語るべからず」
と、最初は固辞していた李左車も、韓信みずから再三教えをこうので、ついに口を開いた。

「将軍は黄河の渡河攻撃に成功されて以来、魏、代に進撃して連戦連勝、今また、わが趙の大軍を破って王と私をとらえ、威名は天下にとどろいています。しかし将兵の実情は、遠く国を離れて連戦し、みな疲れはてており、戦力は非常に低下しております。もし将軍が今、この疲労した兵を燕の堅城にぶつけられても、戦いは長びくばかりで、城は抜けないでしょう。そうなれば大目的も達成できないばかりか、将軍自身があやうくなります」
と諫めた後、こう進言した。

「将軍はまず兵を休めて、十分戦力を回復させた後、国境に軍を派遣し、簡単な手紙を燕に与えて威圧すれば、将軍の今までの大勝におびえている燕が、言うことをきかないはずがありません。燕が従ったら、雄弁の士を斉国に派遣すれば、斉もまた服するでしょう。やがて天下を意のままにすることができます」

 韓信は、この献策を採用し、その月のうちに、戦わずして燕を征服したのである。

 愚者は何人からも学ばず、賢者は何人からも学びとるのである。

高森顕徹著 光に向かって 100の花束より)


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(親鸞聖人の花びら)

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