(41)満点主義の秀才でなかったから、
    起死回生の勝利を生んだ

光に向かって

 戦いで奇襲が、起死回生の勝利を生むことがある。

 幼名・牛若丸。悲劇の武将として知られる源義経は、奇襲の名人といえよう。

 兄、頼朝の命を受け、摂津一ノ谷、讃岐の屋島、長門の壇ノ浦に平家を追いこみ、ついに滅ぼした。

 彼の戦歴を検証するとき、その無鉄砲さに、あきれかえる。

 一ノ谷の合戦でも「兵法に、そんなむちゃはない」という軍師・梶原景時の諫めも聞きいれず、ひよどり越えの逆落としで、急な崖を駆けおりて、平家の本陣を裏から攻めて潰走させている。

 いくら誇張されているにしても、壇ノ浦の八艘飛びなど、一軍の大将のすることではない。

 奇襲は好機をとらえ、少数で敵の大軍に突入する。

 沈着冷静な相手だと危険千万だが、成功すれば、びっくり仰天、戦わずして敵は逃げだしてしまうのである。

 第二次大戦の勝敗を決したといわれるミッドウェー海戦で、日本の連合艦隊は、数、量ともにアメリカを圧倒していた。

 何倍も強いはずの日本軍が、なぜアメリカに完敗したのか。

 アメリカ指揮官の無鉄砲さに勝因があった、といえる。

 日米の海戦では、アメリカの奇襲が、ことごとく勝利につながっているのである。

 しかもだ。ミッドウェー海戦のニミッツ大将、サンゴ海海戦のフレッチャー少将、南太平洋海戦のハルゼー中将、マリアナ沖海戦のスプルーアンス大将、いずれも猛将ではあったが、智将とは、ほど遠い。

 スプルーアンスやハルゼーなどは、学校秀才からはバカあつかいされていたという。

 日露戦争を大勝利で飾った東郷元帥も、開戦直前まで窓際族的な海軍中将で、軍事的エリートとは逆だった。

 学校秀才でなかったからこそ〝敵前転回〟という、無謀とも思える戦術がとれた、ともいえよう。

 満点主義で、いつもビクビクしている秀才は、奇襲戦の勝利に不向きのようである。

 

高森顕徹著 光に向かって 100の花束より)


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