(11)かんしゃくの、
     くの字を捨てて、ただ感謝

光に向かって100の花束

 ある高僧のところへ、短気で困っている男が相談にきた。
「私は生まれつき短気者で困っております。短気は損気と申しますが、まったく腹を立てた後は、自分も気分悪うございますし、他人の感情も害して悔やむのですが、後の祭り、どうにもなりません。なんとか私のこの短気を、治していただきたいと思って参上いたしました」
 ニコニコ笑いながら聞いていた高僧は、
「なるほど、聞けばそなたは、なかなかおもしろいものを持って生まれてきたものじゃ。治してしんぜるほどに、その短気とやらをひとつ、私に見せてもらいたい。今もお持ちかな」
「へえ、短気を今ここへ出して見せろと言われましても、ただ今は、べつに短気をおこすあてもありませんので。ただ今は、ございません」
「しかし先ほど、そなたの話では、生まれつき持っていると言ったでないか。持っていれば、身体のどこかにかくれているはずだ。遠慮することはない、おもいきって出してみなされ」
「いや、ただ今は身体中を探しても、どうも、その短気が見あたりません」
「しかしどこかにあるだろう、どこにあるのかな」
「そう言われると困りますが、今のところ、どこにもありません」
「そうじゃろう。ある道理がないのだ。そなたは、生まれながら短気じゃと言うが、元来、短気というものはないのだ。今後、ムラムラとカンシャク玉が破裂しそうになったら、この短気やろう、どこから出てくるのか出所を探してみるがよい。どうかしたおりに、そなた自身が出すのだ。自分が出さなければ、どうして短気が出るものか。己が出しておいて、生まれつきというのは勝手なことだ」
と諭したという。

 ならぬ堪忍、するが堪忍。大切なのは心であり、心の持ちようである。

  かんしゃくの
    くの字を捨てて
     ただ、かんしゃ

高森顕徹著 光に向かって 100の花束より)

 

 

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更新履歴

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