笑う門には福来る

白道燃ゆ

笑う門には福来る

 昔から「笑う門には、福来る」と言われる。

 アメリカの、カーネギーは、
「ほほ笑みは、人間が持つ、独特の自己表現法である。この貴い天の賜物を、正しく活用することは、人間のもっている一大特権である」
と指摘している。

 そう言えば、サル程人間に近い動物はいないが、サル笑いの事実はない。猫も笑わないし、牛も笑わない。馬は、ちょっと笑うらしいが、人間の笑いの比ではない。
 そんなことをしたら人に笑われる、とは言うが、犬に笑われるとはいわない。

 勿論、笑いと言っても種々ある。赤ちゃんのケラケラ笑いや、豪傑笑いもある。
 クスクス笑いや、人を嘲笑するセセラ笑いや、時には泣き笑いもある。

 しかし、何といっても、一番、人の心を和ませるのは、総てを忘れた会心の笑いであろう。明朗そのものの、屈託のない笑いに、しくものはない。
 心からの美しい微笑は、それこそ人生の花である。純粋無垢の笑いに接する時、人生の苦労は吹き飛んで、笑いの中に生き甲斐さえ感ずることがある。

 考えてみると、ほほえみ程、元手のいらぬものは珍しい。人を喜ばせるには多少とも元手のいるのが、セチ辛い世の中の常である。

 ところが、ほほ笑みは、元手が全然いらないばかりか、周囲全体を和ませ、トゲトゲしい対人関係をスムーズにする。
 勢い、仕事の能率もグンとはかどる外、第一、自分の健康に大変よいのである。

 特に「女は愛嬌」とか、「主婦の笑顔は、家庭の光」などと言われるように、女性に微笑が要求される。
 全国を回っている富山の売薬屋さんから聞いた話であるが、行商に行くと商売相手は、殆ど、主人でなく主婦である。
 応接に出てきた奥さんが、明るい顔している家と、くすぶった顔している家とがある。
 明るい笑顔を湛えている奥さんの家は、一、二年後に行ってみると、必ず家を新築したり、改築したり、庭がきれいになっている。
 ところが、苦虫噛みつぶしたような奥さんの家は、相変わらず玄関の履物が散らばり屋根瓦が落ちたりしている。
「一家の盛衰は、主婦できまりますね」と永年の体験を聞かされて感心したことがある。

 実に、ほほ笑みを忘れた人間程、みじめな、気の毒な人はいない。ところが天下の渋面を一人で背負っているような人が多い。
 こんな人は、あたり一面に、メタンガスを撒き散らし、自損損他になる。
「笑う門には、福来る」は、確かに真理である。

 ところが、いくら笑って愉快にと言われても、余りにも人生には、笑うに笑えない深刻な事実が充満している。

 涙と汗のにじむ人生にあって、会心の笑いを忘れるのも無理はない。

 親鸞聖人は、阿弥陀仏に救われた者は、心に歓喜が多くなり、苦労の人生を笑って暮らせる人になれると、心多歓喜の大益を教えていられる。

 笑うにも笑えない苦悩充満しているこの人生を、心から愉しく笑って暮らすには、早く信心決定して、阿弥陀仏より心多歓喜の妙益を頂戴するより外にない。

「南無阿弥陀仏を称うれば、この世の利益きわもなし、流転輪廻の罪消えて、定業中夭除こりぬ」
と親鸞聖人は教えられ、蓮如上人また、
「同行の前にては、喜ぶものなり、これ名聞なり。信の上は、一人いて喜ぶ法なり」
と仰有っていられるのも、このことである。

高森顕徹著 白道燃ゆより)

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